耳鳴りの話NO.1

題目一覧 耳鳴りの話・投稿のページ

目次

耳鳴りの話NO.2

20.梅津の接骨院(3)

19.梅津の接骨院(2)

18.梅津の接骨院(1)

17.キューサイ青汁

16.鍼灸

15.整体屋さん(5)

14.整体屋さん(4)

13.整体屋さん(3)

12.整体屋さん(2)

11.整体屋さん(1)

10.雑誌考

9.カイロプラクティックス(4) 快感持続一時間

8.カイロプラクティックス(3) ヘルニアの姉ちゃん

7.カイロプラクティックス(2) 歩き方の講習

6.カイロプラクティックス(1)

5.漢方薬

4.耳鳴り日記

3.薬も効果ナシ

2.更年期障害

1.耳鳴り発生


1.耳鳴り発生

昨年の4月7日、夜8時頃のことです。(注:昨年とは1997年です。)
突然、左後頭部辺りからジーっと云う音が聞こえて来ました。
鈴虫にしたら季節外れ。隣の家でナニかしてるのか。冷蔵庫から異音がしてるのか。
ところが、鳴り止みません。気分のヨイ音色でもないから、側に居た嫁はんに、
「どっかで、ナニか変な音がしてるなあ。」
「ナンにも聞こえへんけどなあ。」
「結構大きい音で、ジーっと聞こえへんか。」
「ナンにも。」
以来、左から、その音が聞こえて、鳴り止みません。耳の病気にでもなったのか。
近所の吉田耳鼻科に行きました。
「左後頭部からジーっと音がしてるのです。結構、大きな音なんですが。」
「ナニか頭を打ったとか、メマイがするとか、大きな音、爆発音を聞いたとか、薬品を使てるとか、そういうことはありませんか。」
「ありません。」
「薬品と言っても、イロイロありますが、ペンキを塗ったとか、そういうこともありませんか。」
「有機溶剤とか、そういうものを扱ったことはありますが、数年前です。常時というわけではありません。せいぜい、数ケ月に一回程度。それも少しだけです。」
「どんな仕事をされてましたか。」
「以前は、品質管理です。」
「肩こりとか、そういうのがありますか。」
「パソコンを時々使いますので、眼が疲れ易くはなってます。」
そんな質問をしながら、先生は鼻の穴に器具を突っ込んで、シュシュと薬を噴霧されたり、耳を覗かれたり。
「鼓膜は、赤くもなってません。異常ありませんなあ。耳、鼻には問題ありません。
風邪も引いておられないようです。そしたら、調べてみましょうか。」
脳波でも、調べられるのかと思てたら、防音室に入れらてれて、聴力検査。
「結果ですが、日常生活では全く問題ありませんが、高音域の聴力が低下してます。」
「耳鳴りねえ。どうですか、気になりますか。」
ナンということを聞くのか。気になるし、ジャマクサイのを我慢して、看てもらいに来てるのや。
「気になりますよ。軽い音と違います。四六時中ですから。」
「そしたら、押さえてみましょうか。」
アア、押さえることが出来るのか。ヨカッタなあ。
「この薬を一日一回夕食後に飲んで下さい。」
メチコバール、メイラックスなる薬を一週間分頂きました。帰ってから、ナンの薬かパソコンで調べたら、精神安定剤。
興奮するよなこともあらへんのに。にしても、聴力検査だけやったけど、ヨイのかなあ。
お医者さんやから、脳腫瘍とか、そんなもんではないことくらいは分かるのやろ。
とか、思いながらも、とりあえず、貰たお薬を指示通りに服用したけど、状況に変化ナシ。
むしろ、日々悪化するのです。
最初は、ある瞬間、ましになることがあったけど、それも無くなった。お薬は効果ナイと、お医者さんに報告したら、
「そうですか。そしたら、朝晩にして、もうしばらく、この薬で様子を看ましょうか。」
薬はヨイけど、ナニが原因か云うてくれんし、
「ナンなんです。この原因は。」
「ウーン。とにかく、もうしばらく、様子を看ましょうか。」
先生はそればっかりで教えてくれませんのです。同じ薬を貰て服用。そんなことが三週間。
通院しても、薬を貰うだけです。
「あんまりこの薬を続けてもイカンので、もう一度、日に一回に戻しましょうか。」
「先生。薬はいいんですけど、自分自身でナニかすることとか、こんなことはしたらアカンとか、気をつけることとか、そういうことはナイんですか。」
「ご本人さんがナニかすることは有りません。」
ナニすることもナイのかいな。そんなこと云われたら、替えってイライラしてしまう。
そおやなあ。こんな町医者ではアカンのやろ。
やっぱり検査装置が揃てる大病院でしっかり看て貰いましょ。
ということで、京都市民病院に衣替えです。
(98/10/26)


2.更年期障害

京都市民病院の耳鼻科。
ここは総合病院です。検査装置も充実してるし、ナニかあっても安心です。
「どおされましたか。」
「左側の耳鳴りなんです。かなり大きい音なんです。」
「どんな音ですか。」
「ジーっという音で、鳴りやむことがありません。」
「そうですか。ジーですか。
頭を打ったとか、薬品を扱おたとか、大きな音を聞いたとか、めまいがして、ふらつくとか、そういうことはありませんですか。」
質問しながら、薬をシューシューと鼻の穴に吹き付けて、
「ヘエー、左の鼻の管がエライ曲がってますねえ。
息苦しいとか、鼻汁が出難いとか、あるでしょう。それで、あんまりキツク鼻をかんだらいけませんよ。鼓膜を痛めることがあります。鼻血が出ることもありますからねえ。
手術をしたらすっきりしますよ。簡単な手術で、一週間くらいの入院です。どうですか。盲腸よりも簡単です。」
そんなこと、看て貰いに来たのと違うのに、ナンの診察してるのや。
「で、耳鳴りですねえ。いつからです。」
「4月7日からです。」
「そうですか。4月7日ですか。3ケ月前ですねえ。よお覚えてますねえ。我慢出来ませんか。チョッと調べてみます。」
又、聴力監査。それ以外の検査はナシ。CTでもやってくれたらヨイのに、ナンにもナシ。
「やっぱりねえ。高音部がダウンしてます。一般生活には関係ナイ領域ですから、聴力低下も気が付かないんですよ。」
「聴力低下と耳鳴りにナンの関係があるんですか。」
「聴力のバランスが崩れたんです。それで、通常ならカット出来てた領域の音がカット出来なくなってしまったわけです。」
意味がよお分からんのや。外から聞こえてるのと違て、中からなんや。カットというのは、入ってくる音を遮断することやろな。その事を聞いたら、
「お薬を出しておきます。一ヶ月分です。これで様子を看て下さい。
お薬で解決スルこともありますし、センこともありますし、ケースによるんです。」
そんなこと聞いてないで。カットのことやのに。
「外も内も同じです。バランスが崩れたんです。」
一般生活に影響する領域の音が聞こえんかったら、難聴。耳鳴りも難聴から来るらしいけど、年齢と共にどおしても高音域は聞こえんよおになるのです。
それがゆるやな低下なら軽い症状。本人も殆ど気が付かん程度やけど、急激なときは耳鳴りが出やすいらしいです。
「耳鳴りというのはですねえ、白髪になるとか、髪が薄くなるとか、顔に皺が増えるとか、老眼になるとか、体力が衰えるとか、そういう類なんですよ。
柴田さんの場合、外見的には白髪は目立つ程ではありません。どちらかというとお若く見えます。体の部品によってその現象に差があるということですよ。
年齢は年齢ですからねえ。まあ、更年期障害というヤツですなあ。」
それならそれで、はっきり云うてくれたらヨイのです。吉田耳鼻科でも聞いたのに、そんなこと教えてくれへんかった。
診察が終わり、病院の薬局から出て来た薬を見たら吉田耳鼻科と同じもんやった。
違う点は、ここは最初から一日三回で一ヶ月分をまとめてくれただけ。吉田さんでは一日一回で一週間分でした。
早い話が、歳やてかいな。本人は若い気で居てるのに。
それにしても、鬱とおしい耳鳴りや。
(98/10/27)


3.薬も効果ナシ

京都市民病院の薬を一ヶ月服用したけど効果ナシ。
そのことを先生に報告するため、再度、京都市民病院。
「どんな具合です。」
「少し音が小さいときもあるのですが、基本的には同じです。」
「そうですか。この薬をあんまり長く続けるのもいけません。そうかといってしばらく続けないと分かりません。漢方薬に変更してみましょうか。
一ヶ月分出しときますし、それでしばらく様子を看て下さい。今日はこれで結構ですよ。」
一時間の順番待ちで、たったこれだけでオシマイです。
座ったと思たらもうおしまい。一分もかかってない。そのうえ薬待ちに、又、一時間。
それで効き目があればどれだけ待たされても不服はナイ。一ヶ月分の薬を貰て服用したけど、アカンなあ。あの待ち時間はナンやった。
又、市民病院です。
「どんな具合です。」
「変わりません。」
「そうですか。いけませんねえ。どおしましょう。」
どおしましょう。先生からそんなこと云われてもこっちが困る。
「どおしましょおかねえ。耳鳴りとつきあってやって下さいな。」
「エッ、治らんということですか。」
「イヤ、そういう訳ではありません。人によっては何年かして突如治る人もありますし、そおならない人もあります。」
「だいたいというか、大凡、何年くらい覚悟せんとアカンのですか。」
「個人差もありますしナンとも言えません。どうしても我慢が出来ないなら、又、来て下さい。
手術という方法も、あるにはありますが、リスクの方が大きいのでお勧め出来ません。」
「手術ってどんなんですか。簡単ですか。」
「イヤイヤ。説明せんときます。手術云々は忘れて下さい。聞かんかったことにして下さい。
それより、鼻の管の方はどおですか。これは簡単ですよ。一週間です。
鼻詰まりが解消出来ますし、イイ具合になりますよ。都合の良い日を仰っれば準備します。今ならベッドにも空きがありますし、良い機会ですよ。」
マタや。そんな事どおでもヨイのに。耳鳴りで来てるのに。
鼻の管がどおのこおのて、八木の南丹病院でも風邪で看てもろたこともあるけど、そんなこと云われてない。吉田耳鼻科でも聞いてない。どおでもヨイし手術する気ナシ。
要するに病院の薬ではダメなんや。
耳鳴りは耳の老化現象で、更年期障害ということやから、考えよによってはハゲを治してくれ、白髪を何とかしてくれ、老眼を治せ。
先生にしてみたら、そんなことになってるのか。無茶なことを云うたらアカンのやろ。
私にしてみたら、覚悟もナシにいきなり耳鳴りになってしもて戸惑いがある。
白髪になったかて、アアそんな歳かいなあやし。老眼かて、だいぶ迫ってるけど、老眼鏡をかけるのを抵抗してるだけ。それで字が見えんというわけでもナシ。
それに、そんなんは誰でもやから、自分でも覚悟してるのです。
そやけど、耳鳴りは覚悟してないです。タマならしょうがないけど、四六時中で、耳のナカからやから、耳栓をしてもしょおがない。
結局、あきらめんとしょうがないということか。そやけど、ひどい耳鳴りなんやで。いつぞや、嫁はんに、
「この耳鳴り、大きいで。聞いてみるか。」
「そんなん、聞こえへん。」
と、拒否されてしもた。
これだけ大きな音やから耳を当てたら聞こえるで。
とは云うても第三者には見えませんし、聞こえません。苦しんでるのは当人だけ。
日によっても違うけど、ひどいときはイヤになる。
(98/10/28)


4.耳鳴り日記

耳鳴りで困ってることを、ナニかのついでに、叔父に伝えたのです。
そしたら、叔母から耳鳴り治療についての新聞記事の切り抜きが届いた。
内容はマスキング法なるもので、耳鳴りに近い音を見つけてそれを聞くことで解消させる。
そお云うたら、京都市民病院の先生も、バランスが崩れたて云うてた。高音域の聴力低下で高音の耳鳴りがしてる。あながち根拠のナイ治療方法でもないのです。
そやけど、京都ではナク、岡山です。どうしてもなら、そうでもセンとしょうがないやろ。
変なもんで、明確な原因ではナイけど、更年期障害。そんな類と知った段階から、イラツキますが、覚悟してしもて、焦ってもしょおがないの気持ちになってます。
近所の人からも、新聞の切り抜きが届いたのです。
治すのは難しい。あきらめなさい。そんなニュアンスのことが掲載されてます。
気分転換に「耳鳴り日記」でも付けて、楽しみなさい。そのうちには治るの話です。
それと、「耳障りな音」とは考えず、「鈴虫の鳴き声」と思いなさいやて。耳鳴りはそんな可愛い音ではナイのやで。
されど、「耳鳴り日記」は「データを取る」と云うことで、案外おもしろいかもしれません。
何曜日にひどいとか、何日毎に軽いとか。耳鳴りの程度を観察し、傾向をつかむのもヨイかもしれん。
それが分かったら、明日は調子ヨイ日とか、悪いはずの日とか予測出来る可能性もある。悪いはずの日なら、覚悟が出来る。
そんな次第で、「耳鳴り日記」なるものを付け始めたのです。
単純に軽い日、きつい日、それでは意味ないし、通知簿みたいに5段階表記です。
この程度のデータなら、一ヶ月もつけたらどんな具合か分かってしまうけど、はっきり云うて傾向ナシ。
更に、朝、昼、晩の三回にしたんや。
数ヶ月やったけど、傾向ナシ。せっかく取ったのやから、データを集計。曜日別、周期別、その他諸々。
データは集計し易いようにと表計算ソフトでやったのです。ランクだけの簡単なもんですが、統計的に検定するまでもなく、「有意ではナイ」。
母が、
「耳鳴りは歩いたら治るらしいで。耳がポンと云うて治るらしい。」
ゲート・ボールの仲間からの情報とのこと。
そんな気圧の変化と違うのやから、ポンと治るようには思わんけど物は試しです。嫁はんも、日曜日には歩いてるし、早速、仲間入り。
大凡、三十分程度を早足で歩くのですが、結構シンドイです。これは運動不足解消のため、今でも続けて、一年間、今だにポンとは云いません。ポンと治るよおなら、土曜日の水泳でも治る筈。
そおこおしてるうちに、耳鳴りにも慣れてきた。当初みたいに、イヤヤ、イヤヤ、どないしょと、深刻でもなくなって来たのです。
とは云うても、慣れて来たのと、解決策を模索するのとは別問題。
毎日のことやから、何とかならんもんかと、インターネットで調べたら、沢山アルのです。
(98/10/29)


5.漢方薬

インターネットでナニか耳寄り情報はないものか。
「耳鳴り」で検索すればお薬があったのです。その一つの、「薬日本堂」に興味を持った。
本店が東京の品川高輪。そこには、勤めてた会社の営業所があって、何回もクレーム回答で行ったことがある。どんなんかと電話をしたのです。
若い女性が電話に出てくれて、いきなりイロイロ訪ねます。
「生年月日は。」
「耳鳴りはいつ頃からですか。」
「どのような音ですか。」
「とぎれることはありますか。」
「めまいはありますか。」
「頭を強打されたことはありますか。」
「薬品を取り扱っておられますか。」
ここまでなら、ドクターの質問事項と同じです。
「パソコンは使っておられますか。」
「一日何時間くらいですか。」
「眼がつらいとかはありますか。」
「何かスポーツはやっておられますか。」
「どのくらいの間隔ですか。」
「良い薬があります。当社独自の製法で作ったもので、霊芝をベースにしたものです。これは漢方薬ですし、最低二ヶ月は服用して頂かないと効果は分かりません。」
薬は三種類です。
「それで、値段は幾らですか。」
「一ヶ月分で七万円です。」
「エッ、七万円もするのですか。それは高いなあ。」
「それなら、二種類にして、四万六千円。」
ナニか知りませんが、一種類の薬で、二万四千円もしてたのか。それでも高いけど、治れば宜しい。ものは試しで注文です。
それにしても、最低二ヶ月やから、九万二千万円もするのです。
注文したら、早速、明くる日に宅急便で届きました。梱包を開いたら、「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」なる粉末と、もう一つ、瓶に入った「源生寿」なる液体です。
これが霊芝と熊笹をベースにしたものらしい。説明書には、その他、高麗人参に、まむしエキスまでブレンドされてるのです。
一緒に電話の相手からのコメントと、「耳鳴り対策」としての、「耳マッサージ法」なる印刷物が同梱されてました。
コメントは私の耳鳴りに合わせて漢方薬を調合したこと。始めてからの一ヶ月は体が漢方薬になじむ期間ですから毎日しっかり続けなさい。風邪をひくと耳鳴りの症状がひどくなるとの注意です。
「耳マッサージ法」は耳を手のひらで覆って上下にこする。
耳を指でつまんで引っ張る。そして、耳を前後にひねる。
それを、朝一番にやれとのこと。やれば、血行が良くなる感じはします。
この「柴胡桂ナントカ」なる漢方薬をインターネットで調べたら、効能に更年期障害があった。
主は風邪の特効薬で、体力増強せえと云うことか。
霊芝は体質改善に効能がある。熊笹はガンに成人病。三十袋と一瓶で、一日一袋と、液体一カップ。瓶には計量カップが付いてます。
この「源生寿」は飲みにくい。まずは、苦いです。良薬は口に苦しと云うし、効能さえあればと、我慢です。
一ヶ月が過ぎたけど、特に変化ナシ。又、薬日本堂に電話で注文です。
前回の担当者が、
「どおですか。」と聞くから、
「まだ、効き目はありません。それはそおと、あの液体は苦いですねえ。」
「そおですか。どのように服用されてますか。」
「どのよおにて、そのまま飲んでます。」
「エッ、そおですか。薄めてもいいんですよ。」
笑いをこらえてるのが分かった。
それならそおと、説明書に書いとけよ。
「原液でも問題ありませんが、水とか、お湯で薄めて服用して頂いてもかまいません。」
それならそおするわいなと、薄めたけど苦いのは同じ。
結論的には、二ヶ月では短いやろから、三ヶ月間実行してみましたが、値段も値段。
風邪薬と割り切るには高価過ぎる。耳鳴りに変化ナシで、止めました。
「耳マッサージ法」こそは、三日坊主の私が三ヶ月やった。
どっちにしても、耳鳴りに効果ナシ。もっとヨイ方法はないのかい。
(98/10/30)


6.カイロプラクティックス(1)

インターネットで「耳鳴り」のことを調べてたら、「カイロプラクティックス」なるものがあった。
「整骨」というほどの意味です。
そんなことを知ったときの事です。裏手のご主人も耳鳴りで悩んで、接骨院に通たはることも知ったのです。
整骨と接骨。どおチガウのか。私の認識では接骨院は文字通り骨折を治す、通称、「骨接ぎ屋さん」。
それを、「整骨」とも称するらしく、「骨接ぎ」と云うより、腰痛、肩こり、ヘルニア等々の治療が得意です。
病院なら、整形外科が該当しますが、こっちは医師免許をお持ちのお医者さんで、整骨などは資格が有ったり無かったりの種々雑多。
いずれにしても、整骨、接骨、カイロプラクティックス。ややこしいから、言葉を統一したらヨイのにねえ。
裏手のご主人は耳鳴りに加えて、メマイもするらしいです。伴えば、メニエール症状ですが、私にはありません。
接骨院以外にも、滋賀医科大学に入院し、治療もされたのに、回復はせんかった。もっと早かったら、ヨカッタのにといわれらしいです。
まずは、そこの紹介で千本丸太町の相良接骨院に行きました。
実は、私が行く前に肩こり治療で嫁はんが行って、エライ感激してました。
「三十分くらいかけて、きっちりやってくれやはる。歩き方の講習までしてくれやはって。」
「それで、肩こりは。」
「一回ではアカンらしい。何回か通院せんと。
そんな時間はナイしなあ。それと、初回は一万円。次から八千円やて。」
これまた、安いもんとは違うけど、ものは試しです。予約が必要とのことで、接骨院に連絡のウエで行ったのです。
接骨院の斜め向かいに、詐欺商法で一躍有名となったKKC(経済革命クラブ)の看板があるのやで。
相良接骨院は十分程度の待ち時間で、先生からの質問です。
「どんな具合ですか。」
「何時からですか。」
「めまいは。」等々。
そして、先生曰く。
「基本的には首の骨がヅレてるのですよ。そのために頭の方に血液が循環し難くなって、血行障害を呈して、耳鳴りになる。放っとくと血管が切れたりしてエライことになりますよ。」
ドキッです。
「足を揃えてみて下さい。ハイハイ。アレ、左右で長さが違いますねえ。
左の方が短い。バランスが崩れているということですよ。」
「ハイ、五年前に骨折したんです。」
私は、五年前に会社から我が家への帰宅途中、バス停から降りてから、ほんの20メートル歩いたところで転けたのです。
いつもなら街灯もあって明るいのに、その日は国道九号線から一歩中に入れば、周囲が真っ暗で足元が見えへんかった。
工事中やったのです。地面が掘られ、マンホールの蓋が出っ張ってたのですが、真っ暗やから、見えません。マンホールの淵に左足が引っかかって、滑って転けた。
マンの悪いことに、その左足が右足に重なってしもて、左方向に転けたとき、マンホールの蓋の出っ張りの淵が支点になって、体重が掛かり、ボキッと折れた。アッという間もあらへんがな。
見事なまでに大きな音で、ボキッと聞こえ、足はカカトの部分からブランブラン。
骨折したと、瞬間に分かったけど、道のど真ん中です。ケンケンで道路脇に移動したけど、痛いのや。
何台もの乗用車が通るから、手を挙げて懇願すれど誰も停めてもくれず。
家はそこから二三百メートルやけど、骨折してるからとてもやないけどアキマセン。
そして、三十分程して、よおやく、一台の車が停まってくれた。よお見たら、アンチャン風。もお一人、載ってるやないですか。これはヤバイかなあと不安になったけど、兎に角、云うてみた。
「足を折ってしもたんです。家は直ぐそこなんです。」
「オイ、降りい。」
仲間を車から降ろして乗せてくれたのです。
それで、場所を指示して、家の前に停めてもろたのです。そのアンチャンに抱えられて家に入ったもんやから、そら、嫁はんがビックリするわなあ。
アンチャンがドンドンとドアを叩いて、嫁はんがナニかいな。ドアを開けたら、眼の前には、真っ青な私の顔。上着もズボンも土で汚してしもて、ヘンなアンチャン風のが私を抱えてる。
「チガウンヤ。この人に助けてもろたんや。お礼を云うてクレ。」
そのアンチャン風のは、「イヤ、イインデス。」
そお云うて、行ってしもた。
そんなことがあったから、人は外見で判断したらアカンと身を持って体験した。
紳士風からは無視され、アンチャン風が親切で。私の価値基準が狂った出来事です。
もっとも、全てのアンチャンが親切ではナイけど、紳士風は見かけ倒しは確かやで。
私なら、紳士風には程遠く、ガサツで単純なオッサン。
そやけど、スーツを着て、髪の毛も揃えれば、外見だけなら紳士風。
(98/11/01)


7.カイロプラクティックス(2) 歩き方の講習

相良接骨院に通たのは、去年の夏のこと。(注:去年とは1997年です。)
ちなみに、薬日本堂のことも去年のこと。耳鳴りはまだ続いてます。
接骨院の先生から、足の長さが違うと云われて、その次です。
「向こうに向かって、そのまま立って下さい。」
先生の指示通り、方向を変えたら、
「背中をシャンとして下さい。」
「そうしてるツモリですけど。」
「姿勢が悪いですなあ。猫背になってますし、首の骨もズレてますよ。」
猫背で姿勢が悪いのは本人も自覚してます。首の骨がズレてるとは、又イヤなことを言われてしもた。
先生の説明では、猫背になってる分、首から先が余計に体の中心から前に行き、首の骨に負担が掛かると云うことです。理屈が判からんことはナイです。
そやけど、そんなこと今に始まったことではないです。
「そおいうのが、ジワジワと重なって、ズレるんです。任して下さい。元に戻して上げます。」
これは、有りがたいです。
先生は私の首筋の辺りを押さはりました。
「ウン、チリチリ云うてますねえ。」
そんなん、判るんかいな。
「口を開けて下さい。」
その状態で首を横に45度曲げられ、首の骨を一つ一つ指で押さえる。これは気持ちがヨイ。
「ズレてましたがこれで本来の位置に戻しました。それにしても、肩がエライ凝ってますねえ。筋が堅くなってますよ。」
そうかも知れません。私は肩凝りは感じん方ではありますが、凝ってはいます。
時々、腕を上げたら痛いときがある。五十肩かと思てますが、特段、気にはしてない。
「日頃から、腕も足も動かして下さい。歩くのが一番宜しい。その歩き方を教えます。」
外に出て、KKCの看板の前を歩くのです。
まず、背筋を伸ばして、前傾姿勢。次に手は握り拳を作る。但し、親指は外。
腕は「く」の字に90度に曲げ、大きく振って、前進です。
前傾姿勢やから、転けんよおにと大股になってしまう。それを我慢して、なるべく小幅。そしたら、つんのめる感じになるのです。
「それで宜しい。ナカナカ、飲み込みが宜しい。」
こんな格好で歩けば、知らん人に見られたらヘンに思うやろ。
「ハイ、今日はこれで宜しい。次回は1週間後です。予約しといて下さい。」
院に戻ったら、さっそく事務の人から、
「次回は一週間後の土曜日。九時にどおですか。」
「保険は利きませんしね。」
それにしても、一万円。次回から八千円らしいけど、痛いなあ。
(98/11/02)


8.カイロプラクティックス(3) ヘルニアの姉ちゃん

相良接骨院も、二回目には気分的に余裕が出来た。
院内の掲示を見れば、先日、講習された「歩き方」の説明があるではないか。
月に一回、前傾姿勢での「歩こう会」を主催してるのです。先生はヨイけど、参加者は恥ずかしいのと違いますかと、止せばヨイのに事務の女性に聞いてみた。
「参加者は、何人くらいですか。」
「ナニがです。」
「あの歩くヤツです。」
「どおなんですかねえ。やってるんやろか。ハイ、柴田さん。」
私の質問は完全無視された。
先生の治療前にナニかするらしいのです。
院内は左程広くもナイのです。全体で十から十二畳程度で、待合い室から、中の様子は見えてます。先生が施術される場所は奥の方に左右二カ所あり、カーテンで目隠しされてますが、それ以外は丸見え。
先客のお姉ちゃんが、ナニかの装置でナニかしてるのは見えており、それが二台ある。
電極があって、背中と首筋に当てて、通電してるのです。それを私もするよおで、事務の女性がタイマーを十分に設定。
私も一応、電気工学出身で、電源は見慣れてます。メーターが沢山有って、周波数100Hz、電流はμAオーダーで流してるみたいで。
但し、その装置のメーカーは表示されておらず、装置名が、「α波発生装置」です。
α波ってナンやろなあ。脳波やあるまいし。
ある周波数を持たせた低電流を発生させる装置やろ。動作してるのかなあ。電圧計のメーターは「0」表示やで。
イヤ、電流は流れてました。ツマミを回せば、ピリピリした。
「どれくらい我慢出来ますか。もし、きつ過ぎるようでしたら、このツマミで調整して下さい。」
勝手に触ってもヨイのかなあ。死ぬことはナイのやろ。
電流がどの程度まで上がるのか、メーターでは、100μAmax。試しに、50から、100にしてみたら、本格的にピリピリを感じたのです。きついから、75にしときましょうやけど、電圧計の針が変動しません。やっぱり壊れてるのです。こんな場合の十分は結構長い。
暇つぶしにそんなことやってたら、隣の姉ちゃんがこのオッサン、ナニしてると云う眼付きで、私を見てるのです。イランことは辞めときましょ。されど、この姉ちゃんの電圧計も、「0」表示。
接骨院は定員二名。先生は先客の姉ちゃんの治療です。漏れ聞こえる話から、ヘルニアらしい。
「そんなもん。病院へ行ったかて、手術されるだけで治らんで。悪いことは云わん。やめとき、やめとき。
ヘルニアみたいなもん。骨がズレてるだけやから、ズレを治したらオシマイや。」
相良先生は病院に対抗意識を持ってるのや。整形外科の先生が聞けば、整骨程度で治るなら、手術はセンと、反論するやろ。
私も足の骨折で入院したことがある。整形外科で、推間板ヘルニアの人も入院してました。
ベッドに寝たままの姿勢で、何日も足に錘(32kg)を付けて、引っ張られてました。牽引法と称するのです。それでダメなら、手術です。
患者さんは手術の覚悟はしてますから、重症で、牽引で治った人はナクて、手術して、コルセットを付けて、へっぴり腰で歩いてました。
コルセットは外からは見えんから、盲腸の手術でもしたのかと見えます。患者さんは、歩けるだけマシと云うてました。
整形外科は、骨折、靱帯、ヘルニア、アキレス腱、脱臼。一概には云えませんが、一番楽は、腕の骨折です。体重が掛かりませんし、脱糸で退院。
それまでは、「ヘルニア」なる言葉だけは知ってたけど、実際に見たり聞いたりして、これには成りとおないと思うのです。ヘルニアの患者さんは、座ってるのも辛いと云うてました。
牽引で治る程度なら、整骨で治るやろ。
お姉ちゃんの程度は知らんけど、相良先生も無責任なことを云うてはアキマセン。
私の如き、ド素人が口出しするのは、もっとアカン。
(98/11/04)


9.カイロプラクティックス(4) 快感持続一時間

ヘルニアのお姉ちゃんが終わりました。
先生が私のカルテを取り出して、
「耳鳴りは楽になったでしょう。」
「イイエ、変化ありません。」
実際、そおなんです。
「そおですか。しばらく続けないとねえ。それと、あの歩き方はやってますか。」
「ちょっと、恥ずかしいもんがありますけど、人目の少ないところではやってます。」
それも、そおなんです。
「どれくらい歩くけばいいんですか。」
「三十分程度です。」
これは、簡単なことではナイです。運動不足解消のために歩いてますが、それでも三十分程度です。前傾姿勢は疲れるから、セイゼイ、十分です。
「慣れたらそおでもナイんですけどねえ。」
そお云いながら、首筋を押さえられた。
「なるほど、まだ、チリチリ云うてますねえ。」
自分でやってみたけど、チリチリは分かりません。
「耳鳴りの人は結構、来られるんですか。」
「あまり多くはありませんなあ。」
「どんな人が多いんですか。」
「やっぱり、年輩の方は肩凝りで、若い人は腰痛かヘルニア。脱臼もあるし、イロイロです。」
「耳鳴りの場合、通常、どれくらいの期間、続けたはるんですか。」
「その人の状況にもよりますけどねえ。」
もしかして、少ないのと違うかなあ。紹介してくれたご主人だけやったりして。ウソでも、
「多いですよ。数ヶ月で、大抵、治ってます。」
とでも云うてくれたら、私も単純やから、スグにも治る具合に錯覚するし、耳鳴り患者を治したと断言してくれたら、先生の施術は耳鳴りに効果があると信じます。
先生が首筋を指で押さえてくれると、ジーンと暑うなって気持ちがヨイのですが、その快感も小一時間で消える。
結局、耳鳴りには関係なく、肩凝り系も、どおなんか。
薬日本堂のも高価なだけで、結局は毒にも足しにもナラン健康食品。健康はお金には替え難いとは云うても、状況による。耳鳴りは苦しいけど、治る見込みがあってのことです。
先生の治療が終わり、帰ろとしたら、老夫婦がご来院です。
七十歳を過ぎたくらいで、その奥さんが先生に症状説明。
「お爺さんが、脳梗塞のよおなんです。病院の先生も手術をするのは体力的にどおかと仰いますし。そおかといって、日常生活にも、多少、支障があります。
それで、こちらの方で治療をやって頂けるのか。そおいうことにも効果がアルのかと。」
しっかりしたお婆さんで、はっきりと聞いたはります。
それにしても、凄い質問です。脳梗塞が整骨で治るのか。治るなら、脳外科医など必要ナシ。
それほどに、このお婆さんは必死で、藁をもつかむ心境なんや。
それで、先生、
「任して下さい。やってみます。」
エッ、大丈夫かいな。次元の違う依頼やで。耳鳴りがよお分からんのに、脳梗塞が治るはずがナイやろな。
かと云うて、このお婆さんの気持ちを考えたらムゲにも断われん。
どおなんやろ。治らんことが分かったうえで、同情的にそお答えてるのか。本気でそお云うてるのか。
それとも、単なるお金儲けのハッタリか。先生の頭のナカを顕微鏡で覗いてみたい心境です。
私はその後、数回通いましたが、首筋の快感持続一時間で、金額八千円也。
耳鳴り解消には程遠いです。
所要時間と資金も問題やから、辞めてしもた。
(98/11/06)


10.雑誌考

今までなら気にもしてませんでしたが健康関係の雑誌が幾つかアルのです。
「健康」「安心」「壮快」等々。
その特集記事に、「耳鳴り」がありました。
読めば、耳周辺のマッサージ。これは、薬日本堂の資料にもあったのです。
この手の雑誌には健康食品に類するものが山ほど掲載されてます。商品名が違うだけのもある。種々の持病に、健康問題で悩む人が多いのです。
記事によれば、薬で圧倒的に多いのが、精力増強と美容のこと。アトの常連は、腰痛、肩凝り、糖尿病、ハゲ、アトピー。
もっとある。血圧、美容、前立腺等々、言い出せば、全部が網羅されることになる。
そんな事例に体験談が主題ですが、その人に合致したのか、うらやましいことです。
万病に効く健康食品まであるのです。医者要らずのアロエ飲料も載ってます。
本当に医者要らずのことばっかりで、アロエと云えば、スーパーアロエがありました。
薬効が従来の五倍で、痛腹、下痢、火傷。ところが、五倍はナニが基準か不明です。雑誌によれば、アロエは美容、血圧、水虫、痔にまで効能があるのです。
まだ、必要はナイけど、育毛剤もたくさんアル。こんなにあれば、「加美乃素」も「マンダム」も破産です。
野菜が必須食品であることに意義ナイけど、それをナンでもカでも良さそなのを放り込み、スープにして、ガン、高血圧、心臓病、動脈硬化、加えて美容にも効果があるとしています。ホンマかいなと疑おたり。
そしたら、鍋料理が宜しいです。食べたことはないけれど、チャンコ鍋が一番と違いますか。
辞めてオク。当事者にすれば藁をもつかむ心境です。
そもそも、私は野菜が苦手。嫁はんが食事に出すから、しようがなしに食べてるだけ。特に、ニンジン、大根はキライです。
原形そのままなら食べますが、トマト・ジュースは苦手です。それを、おいしいと、トマトの缶詰を毎日でも飲むらしいです。野菜ジュースもありますが、私はイヤやから、アカンのか。
さらには、自分のオシッコを飲むとヨイのです。それも、朝一番のシボリタテがヨイのです。これも、私は遠慮しますが、ホルモン、ミネラル等、貴重な成分が、ふんだんに含まれて、健康維持にヨイとのことです。
またまた、美容にもヨク、肌がツヤツヤするのやて。オシッコでなあ。
自分のならヨイではないかと書いてありますが、アカンもんはアカン。私は女性でないから、美容は無関係。
飲み水がナク、生死をさまよう状況なら、そんなわがままは云うてられへんけど、それはその時のことです。
買おた雑誌にも有力情報はナシ。
整骨院も中止してたら、裏手のご主人が、筋を引っ張りに行ったと、嫁はんからの情報です。
「筋を引っ張るて、ナンのこと。」
「私も分からへんけど、筋を引っ張って、血管を正常な位置に戻さはるらしい。」
「そんなん、筋を引っ張っるて、どおして、やらはるのやろ。」
「知らんよ。ただ、そう聞いたさかいに、そう云うてるだけや。」
「筋て、あの首筋の筋とか、そういう筋のことかなあ。」
「そおらしいけど。」
筋を引っ張って、耳鳴りが治るのか。
整骨院のこともある。
期待してもイカンけど、モノはタメシでやってもらおかなあ。
(98/11/08)


11.整体屋さん(1)

裏手のご主人がご親切にも、筋の引っ張屋さんの地図を書いてくれたのです。
そこは看板はナシ。狭い道路で、車はアカン。そこまでメモされてます。
ということは、車で行くなら、駐車場を探せの意味となる。場所は円町近くで、我が大学の近くでもある。概略の地図でも、位置関係は分かる。
当日は少し早めに家を出て、駐車場の確保です。円町には駐車場があったはずで、まずは、そこへ行ってみた。
ところが、先客の車が入り口に停まり、様子がおかしく、動く気配ナシ。よお見たら、運転席に人が居てません。
おかしいなあと思てたら、車の持ち主が現れて、こっちへ来るのです。表情がニコヤカで、服装がモーニングやから、文句をつけにではなさそうです。
私にナニか云いたそうやし、悪いことをした覚えもナシ。車から出れば、
「休みですわ。」
「結婚式場に行きたいんですけど、何処か知りませんか。」
「何処て、式場のことですか。駐車場のことですか。」
「駐車場です。」
「式場は玉姫殿ですか。」
私の結婚式が円町の玉姫殿です。
「そおです。」
「玉姫殿には無かったのですか。」
「こっちの方と聞いたんですわ。」
それで、状況が分かった。玉姫殿の駐車場を間違えたのです。
「それなら、もっと、西の北側に有ります。その信号の直ぐ向こうあたりです。直ぐそこですわ。一緒に見に行きますか。」
私は本気です。時間もあるのです。
「イヤ、そんな。」
「いいんですよ。」
とは云うても、親切の押し売りもいけません。
「玉姫殿の人が云わはったのは、あっちのハズですが、そこの人に確認して下さいよ。
玉姫殿にまだ関係してるかどうか。そこが違うと云うたら、そこで聞かはったら分かります。」
その駐車場は私が式の準備で何回か使たことがあるけど、二十年以上も前のことです。
「そおですか。それで、車をお願いしますわ。」
その人の車は、私がバックせんことには、身動きとれません。それにしても、結婚式があるということは、本日は大安吉日の土曜日かいな。
とりあえず、円町の駐車場はアカンから、もっと先の図書館の駐車場に向かいました。
その筋屋さんには、この方が近いです。それはヨイけど、時間が早過ぎる。約束は朝九時が、三十分前には着きそおです。
どっちみち、先客でもあれば、待たされるやろ。そやから云うて、時間をつぶす場所がナイ。
天気予報では雨の確率70%。
雨は降ってないけど傘持って、ゆっくり歩いて、筋屋さんです。
(98/11/10)


12.整体屋さん(2)

地図の筋屋さんは駐車場から十分程度。
丸太町通りに出て、西に行けば地図のとおり、目印のガソリンスタンドがある。
そこを曲がり、又、曲がり、目印のお地蔵さんが見つかって、イヨイヨ、すぐそこの筈。
小西さんという表札を探してたら、その表札の前で色白で頭に手ぬぐい被った私より少し若そおな人が家の前を掃除してる。
私の叔父も色白で若いとき手ぬぐいを被ってました。寝癖取りとして。
その人が先生と思たから、
「すみません。柴田と申しますけど、小西さんのお宅はここですか。」
「電話予約の。」
「ハイ、柴田です。宜しくお願いします。」
「エライ、早いですなあ。云うても、二十分前か。まあ、中に入って下さい。」
先客が居たはるかと思てましたが、先生がカドを掃除してるから、私が本日最初の患者やろ。
その隣の表札も同じ「小西」さんで、自宅と仕事場かなあ。
家の中に入れど、どおしたもんか。
勝手に上がるわけにもいきませんし、部屋の配置も知らんがな。困ったもんやと思てたら、案の定、隣の家とつながってて、先生が中から現れた。
「どおぞ。上がって下さい。」
入った部屋はフツウの畳の部屋でパソコンとテーブルがあるだけ。
用紙を渡され、住所、電話番号、氏名、生年月日と症状を記入。
その間に先生はパソコンを起動させ乍らの質問です。
「お名前は。」
「生年月日。」
「どんな症状。」
全部、用紙に書いたことやけど、先生直々のご質問です。
「何日から。」
「ハイ、四月七日です。」(クレグレも1997年の話です。)
先生は、記入した用紙を見ながら、パソコンに入力です。
「半年前ですなあ。で、どんな具合です。」
ここから私との面談です。
「キーンと、音がしてます。四六時中。寝てるとき以外はです。」
そして、吉田耳鼻科、京都市民病院、薬日本堂の話。そして、相良接骨院のことまで、一通りの経過説明したのです。
「そうですか。私は、筋です。整骨ではなく整体ですなあ。」
「内臓はあるべき位置になくてはいけません。そおせんと、血液の循環が正常にならんのですよ。
耳鳴りの場合も、そっちに血液がうまく循環してナイからです。そのためには、まず内臓の位置を確認して、あるべき位置に戻します。
耳鳴りも、肩凝りとか、そおいうもんに原因してる筈ですから、そのあとで肩の筋も整えましょう。そしたら、耳の方にも血液が回って耳鳴りが解消します。」
よお分からんけど、頭の血の巡りが悪うなってるということや。アホに接近ということや。
「ナニか着替えは持って来てますか。」
そんなん見たら分かるのに。荷物は傘だけ。その傘も玄関の傘立てに置いたからナニもナイ。
電話予約の時に聞いたのです。
「ナニか持って行くもんとか、準備せんとアカンもんはありますか。」
先生のご返事は、
「イイエ、ナニモ。そのままで結構ですよ。」
そお聞いたから手ぶらです。
「イイエ、ナニモ持ってきてません。」
そしたら、先生、
「あっちの部屋に準備してありますから着替えて下さい。」
私が座ってた右に襖があって、その向こうが治療室。
(98/11/16)


13.整体屋さん(3)

このお宅は大通りから少し入り、車の騒音も聞こえません。
周辺も古い家並みの住宅で静かです。
それにも増して、この部屋は和室で天井からは蛍光灯がぶら下がってますが、豆球しか点灯されてない。薄暗いこともあって、シーンと音がするくらいの静けさで、私の耳鳴りがウルサイだけ。
籠に浴衣がある。着替えた頃合いで、さっきの部屋から、先生の声。
「着替えは、宜しいですか。」
「ハイ、終わってます。」
先生の指示で予め敷いてある布団にうつむきになったけど、丁度、顔の部分にタオルがあって、それが気になった。
タオルにシミがついてるのです。顔を横にスルナという指示ですが、顔がまともにタオルに被さるのです。
そのシミの原因は直ぐにわかりました。
先生は足首から始まって体の上の方へと筋肉を揉みほぐす。それも、筋を引っ張るというのやから両手で筋肉をグッとつかむのです。
結構痛いけど、悲鳴を上げたらアカンとグッとこらえます。
足の方はマシですが、脇腹辺りはたまりません。イヤでも、歯を食いしばり、体には力が入り、ハーハー、息したり、ウーンと唸ったり。
とうとう、口が開いたままになり、唾液が出てくるのです。シミはそれやで。タオルくらい交換しといてクレ。
とは思ても、そんなこと、どおでもヨイ感じ。悲鳴を我慢するのが精一杯。
先生も、大変な作業です。そお思てたら、漢方薬屋さんが薬種をすりつぶすときに使うよおな円盤状の擂り粉木を45度に二枚重ねたよおな器具を使い出すのです。その円盤で足首を挟み、揉みほぐす。
それが終われば、又、足首を手で掴むのです。エライ丁寧に間断ナク。
「上向きになって下さい。」
その指示で上向きになれば、又、脇腹をつかまれて引っ張られ、こっちは唸りっぱなしです。端から見れば、拷問されてるよおに見えるやろ。そして、先生、
「胃下垂ですなあ。」
突然、そんなこと云うて。
そう云えば、半日人間ドックの診断書で書かれてました。
「歳と共に胃は下がるのです。すると血管も引っ張られて下がりますから、その分、血の循環も悪くなります。」
云うた途端、予告もナシに脇腹を引っ張られた。思わず、知らず、体が逃げる。
敵も心得たもんで、逃げる体勢の体をしっかり捕まえ、ギューとやる。ナンデこんなキツイことされんならんのかと思うくらいです。
ガマン、ガマン。耳鳴りを治すのや。タオルのシミも忘れてしもた。
「そしたら、十分間、そのままで結構です。休んでて下さい。寝てもらっても宜しいですよ。好きにして下さい。」
そお仰っると、かけ布団まで出し、豆球の明かりも消し、さっきの部屋に消えたのです。小休止です。先生も、もの凄い重労働。
私もすることもナシ、布団で寝てんとしょうがない。静かやし、ウトウトしたいけど、そうはイカンのです。
初めてのお宅で、そんなことが出来るほど、神経がズ太いことナイわいな。
(98/11/18)


14.整体屋さん(4)

休憩が終わり、先生、ご入室。
「そしたら、胃下垂の胃を、元の位置に戻します。それから、肩から上をやり、耳鳴りを抑え込みます。」
はっきり、そう聞いた。嬉しいなあ。これで、耳鳴りから、さようならです。
期待半分、疑惑半分。勿論、治ることに越したことはない。
それにしても、この小西邸の治療室は奇怪な雰囲気です。先生には失礼ではありますが、まず、和室で明かりが豆球だけ。
受付、事務員は居てナイし、次の患者さんも居てません。他人の眼がナイのです。
相良接骨院との比較では、受付事務の人が居り、患者も居てました。
ここは、まだお次の人がお見えでナイ。
患者が、私の如きオッサンならどおでもヨイけど、妙齢の美女ならドオなるのやろ。一応、先生も男やで。体を完全に密着されることもある。そおせずば、施術が出来ません。
先生となれば、私みたいな煩悩の塊ではナイのやろ。仕事のため、夢々、そんな卑猥な発想セズと思うけど、ワカランで。
フとそんなことを考えた。人相、外見なら、相良先生の方が余程やくざっぽく、胡散臭いけど、人眼が多いです。
お互いの信頼関係ではありますが、私のよおな善良なる患者ばかりではナイのです。私が胡散臭い奴で、怖いオッサンならドオするかです。私がこういう雰囲気に慣れてないからやろなあ。唸りながら、そんなアホな発想ばっかりしてました。
「ハイ、胃は正常な位置に戻りましたよ。この方が消化も良くなりますからねえ。
次は、いよいよ肩から上です。正座して、腕を上げて。」
正座して、バンザイする格好になり、上げた手を組めとのことでした。
そんな状態で、肩の筋を引っ張られたら、痛いですが、ショウガナイ。そのままの状態で、首筋を引っ張られ、これも痛いです。
私の肉は薄いから、尚更です。筋肉隆々なら、引っ張り易いと思います。先生も、つかみ難そうで、つかんだ手が滑り、私は、繰り返されて、苦痛です。
一生懸命やって戴いてるのに、不満を漏らしてはバチ当たりです。
「もっと、背筋を伸ばして。」
本人はそのつもりやけど、なってナイよおで、又、猫背で姿勢が悪いと云われるのか。
「姿勢がねえ、意識して、伸ばすように心掛けて下さい。今だけではナク、常にです。
ハイ、オワリました。それで、どおですか。」
「エッ、ナニがですか。」
「耳鳴りです。消えましたか。」
まだ、ナンの変化もありません。
施術中なら、そっちに気が行き、考えませんでしたが、我に返れば、聞こえてます。
「一回で、効果があるのですか。」
「ある人もあります。」
つまり、ナイ人もあるのやろ。
「着替えて、あっちの部屋へ来て下さい。貴重品を忘れないように。良くあるんです。」
貴重品持参で、こんな場所に来る人も居るのやなあ。又、アホなこと考えて。
(98/11/20)


15.整体屋さん(5)

最初の部屋に戻り、小西先生からの注意事項です。
「まず、食事は規則正しく採って下さい。採ってますか。」
「バラバラです。」
「心がけて下さいね。次に、体を良く動かして。そおそお、スポーツはナニかしてますか。」
「一週間に一回ですが、水泳してます。」
「それは少ないです。歩くのも良いですよ。汗をかくくらいです。
三十分程度はやって欲しいです。歩くのは、只で出来る健康法ですよ。」
只でも、毎日、三十分を歩く用事がナイのです。健康のため、歩くなど、そんな几帳面でもナイのです。つべこべ云わず、体を動かせです。
「肩凝りはヒドイですねえ。」
「そおですか。凝ってるかドオか、感じてないのです。首筋が痛いのはありますが、気にしてません。」
「首筋が痛いのは立派な肩凝りです。感じ方には個人差がありますが、眼の使い過ぎとか、手も体も偏った使い方をしたらなりますからね。
暇も見つけては、適当に手とか、首をグルグル回す。ストレッチ体操をするとか、それも効果がありますから、心掛けて下さい。」
よおやく、終わって、治療代を払いましたが、次の話が出て来ません。
「次回はどおするんですか。」
「整体はですねえ、間を詰めて、ショッチュウやってもしょうがないんです。
まず、一ヶ月、様子を見て、又連絡して下さい。」
次の予定を決めれば、私もそのつもりで調整するけど、ナンにもなしに、一ヶ月、様子を見ての予約は邪魔くさい。
それにしても、商売ッ気がないのです。私は、八時四十分に到着し、十一時になりましたが、次の人がマダ来てないのです。
平日なら分かるけど、土曜日です。流行ってないのやなあ。それでも、家を二軒、持ったはるからと、又余計なことを考えて。
玄関に置いた、傘も忘れず、駐車場です。駐車場は五十台程度が駐車出来るのですが、車の出入りは少ないし、極めて静かです。
無人料金所で、駐車料金を払おとしたら、駐車カードが見つからん。何処かに落としたのか。
車を元の場所に戻し、車の中に、周辺に、シラミツブシに探したけど、ナイのです。
ポケットも全部探したけど、ナイのです。
どこで落としたのか。とりあえず、車はそこに置き、元来た道を逆戻りです。券は、ズボンのポケットに入れたはず。小西邸で着替えたときも、ポケットの中のまでは出してないし。
イヤ、待てよ。治療代を支払うとき、ポケットから財布は出したのです。それと、トイレも借りて、ハンカチも出した。
さて、どおするかです。小西邸までの道を確認しながら歩くか、駐車場の管理者に説明して、処置するかです。
小西邸で落とした可能性大ですが、往復約20分。無い可能性もある。道に落ちてないかと、丸太町通りまでは探して、中止した。
無人料金所の呼び出しボタンを押して、説明です。
「駐車カードをナクしたんです。」
「何時から駐車されてましたか。」
「8時30分からです。」
「きっちり、覚えてられますねえ。料金は750円です。事務所に来て下さい。」
それで、事務所は何処やな。
「貴方の右向かいの建物の中央に入り口があります。そこから入って頂いて、真っ直ぐで、ドンツキを左。それで分かります。」
思わず、アッチですかと入り口の方を指せば、
「ハイ、そうです。」
監視カメラがあるのです。相手からこっちはしっかり、見られてるのや。
そこは、広い場所で、何名か居てますから、誰に聞いてヨイのやら、困ってたら、四十歳程度の女性が私を見るなり、手を挙げ、ニコニコし乍ら近づいて来る。何処かで合おたのか。知らんけど。
年齢も違うし、同級生ではナイ。会社としても、記憶にナシ。
「あっちに行ったり、こっちに行ったり。出たり入ったり。
呼び出しボタンを探すのに、エライ時間が掛かって、ご苦労さまです。750円ですよ。」
そおか、こっちは、相手を認識してないけど、相手はこっちを認識してたのです。
それにしても、私の行動の一部始終を見られてたのか。見れば、天井には監視カメラのモニターがぶら下がってます。
そもそも、この部屋から、駐車場の出入り口は丸見えで、モニターも必要無いくらい。
ヘンなオッサンが、ナニを心配顔でウロウロしてるのか。そんな具合に見られてたのかなあ。
結局、整体はこの一回だけ。
(98/11/21)


16.鍼灸

裏手のご主人がです。
滋賀医大に耳鳴りのヨイお医者さんがあるから入院されたけど、アカンかったのやて。
「もおチョッと早かったらヨカッタのに。」
先生から云われたとかで、嫁はんが耳鳴りが気になるのやったら、早目に看て貰いに行ったほうがヨイでと云うのですが、気が進まんのです。
耳鳴りは気になりますが、入院してまではどおかなあ。
ご主人が治らはったんやたら、ヨイけど、入院が早い遅いの問題ではナイよおな感じもありまして。
原因が精神的なもの。或いは、中耳の疾患、爆発音なら可能性があっても、更年期障害ではなあ。
そのご主人に町内会の行事、草刈りで合おたから、聞いてみたのです。
「どんな具合なん。」
「メマイはナイんだろ。イイじゃない。こっちは、メマイがしちゃってさあ。大変なんだよ。」
私は、もうちょっと話をしたかったのに、ご主人は、それだけ云うて消えたのです。
えらいあっさりしたもんで。ちなみに、ご主人は金沢出身で一歳下。
私にメマイがナイ事はナイけど、貧血症状のメマイやから、耳鳴りとは無関係です。
嫁はんからの情報では、ご主人のメマイはヒドイらしいです。そやから、入院までしたのやろ。
ご主人は、更に鍼灸にまで挑戦したらしいのですが、アカンかったとか。
整骨、整体、鍼灸。整骨、整体にも、多少の抵抗があったけど、耳鳴りの鬱っとおしさが、勝ったのです。
どの程度の効果か、ものは試しでやったけど、結果はご覧のとおりです。鍼灸は頭っから、拒絶反応がある。
針は顔面神経痛での回復例は知ってます。これは、神経の刺激にはヨイのやろ。
ヤイトは祖母がやってました。
ヒドイ肩凝りで、背中にモグサを載せて、線香で燃やすのです。自分では出来んから、私がやらさせられた。
やるのはイヤでやってけど、頼まれたらしょうがない。祖母の背中はヤイトの痕だらけ。見るからに痛々しく、火をつけ、煙が出ると、
「ウーン」と、唸ってました。
「熱いんやろ。」
「ウーン。」
熱うナイはずがナイ。背中に火を点けられ、カチカチ山状態です。
小さいとき、ナニかしたら、
「ヤイトすえたるゾ。」などと、脅されて。
祖母はナンにも悪いことしてないのに、ナンで自分からヤイトするのか。
それをナンで私がやらさせられるのか。そんなことを思いながら、祖母にヤイトしたもんやから、鍼灸はイヤです。
それでも、耳鳴りが治るなら、傾聴に値しますが、検討の余地ナシ。
よって、鍼灸は話を聞いただけ。
(98/11/23)


17.キューサイ青汁

耳鳴りに関する耳寄り情報がないものか。
インターネットで、検索です。そしたら、「まずい。もー、一杯」のキューサイ青汁のサイトが見つかった。
健康食品ですが、申し込むと、7日分の無料サンプルを送ってくれるのです。
只なら、どんなもんか、試してみたろかと。
説明では二、三週間掛かる筈が、明くる日にクール宅急便で届いたのです。ナンでクールなんか。
梱包を解き、中を見れば、冷凍なんや。手の平の大きさで、90gのポリ袋7個で一週間分、密封されてます。
それを、ポリ袋のまま、ぬるめのお湯に浸けて、解凍して飲むのです。そのままでもヨイし、リンゴ・ジュースにミルクを混ぜて飲むのもヨイのです。ホット・ケーキの粉に混ぜて、ホット・ケーキにして、食べてもヨイ。
まずは、試飲してみたれ。
説明書のとおり、ぬるめのお湯に漬け、解凍し、ポリ袋の封を切り、コップに入れた。
ナンと表現したらヨイのか。青臭いニオイです。
新緑の青臭き毒素が世に満てり。
誰であったか、高村光太郎かいなあ。鼻の利かん私が匂うから相当なもんです。
まさか、光太郎がキューサイをそんな具合に形容したわけではナイのですが、思わず、思い出したほどに青臭い。
これを飲むんかいな。ニオイがこれなんや。テレビではニオイのことまで云うてナイで。
味のことだけです。そしたら、味はもっと凄いのか。
飲めば、まあナンと云うのか、青臭い味。ニオイどおりの味で、暫くは口の中にも周辺にも、その匂いが漂ってます。
長男がソバに居た。
「お父さん、そのニオイなんやな。」
「キューサイや。」
「買おたんか。」
「サンプル、サンプル。飲むか。」
「そんなもん、イラン。」
「まあ、そう云わんと、健康にヨイらしいで。」
「イラン、健康そのものや。」
「そう云わんと、ものは試しやで。」
私がひつこいから、息子は毒でも飲むよな仕草で挑戦です。
「こんなもん、もう一杯も、飲めんわなあ。」
息子が飲んでるのを見て、母曰く、
「それナニ。」
「キューサイや。」
「キューサイてナニ。」
「テレビで、宣伝してるやろな。まずい、もう一杯。」
「アア、あれか、おくれ。」
母の場合は、こっちが勧めんでもヨイのです。
キューサイを試飲して、以降、二度目の請求はナシ。
このキューサイですが、問題点がある。値段はベツにして、保管方法が冷凍庫でナイとアカンのです。
我が家の冷凍庫では保管する余裕がナイ。そんな人が多いやろ。
冷凍庫は頼めばキューサイが貸してくれますが、それを置く場所もナシ。
工夫したら、出来るやろけど、そこまでして、どおやろか。味に、匂いはドオでもヨイのです。実際に効能があれば素晴らしいけど、それ以前の段階で挫折です。
キューサイの会社も、もお一工夫が欲しい。完全乾燥してしまうとか、粉末にするとかで。
それが出来れば、保管の場所も取りませんし、もっと拡販出来るのに。
説明書では、加熱は栄養分が破壊されるから、避けた方がヨイのやて。そやのに、ホット・ケーキに混ぜるのやて。
キューサイの会社は業績も延びてます。
私の方は、サンプル段階でお手上げや。
(98/11/24)


18.梅津の接骨院(1)

耳鳴りは収まってないけど、慣れて来た。
最初の頃は、脳腫瘍と違うかなあとか、耳の疾患かと、色んな可能性を想い浮かべましたが、耳の老化と分かってからは、余計な心配せんよおにした。
そやから云うて、常に鳴り響いてるのやから、忘れることはナイのです。特に朝がカナワンのや。目が覚めたら、鳴ってます。余程のことがナイと、寝直すことも出来ません。
キューサイはそんなに期待したわけでもないのです。テレビで宣伝し、インターネットで無料サンプルが貰えるから、どんなもんかと云う程度です。
キューサイまでは去年のこと。
ここからは今年のことですが、今年になってから、そんなに動いてないのです。その間も、情報だけは仕入れてます。(注:1998年の事です。)
ドコソコの奥さんが耳鳴りで二年程悩まはったとか。それなら、二年で治るのか。そしたら、それまでのガマンです。
ドコソコのご主人が十年以上前から耳鳴りらしいけど、まだアカンのやて。
それで、その奥さん、ご主人のお歳は幾つなんですか。聞いたら、六十歳。まだそんな歳と違うがな。
耳鳴りなんか、外傷はナシ。外には聞こえませんから、比較のしよおがナイのです。
ご本人だけがツライのです。そやから云うて、自分が一番ヒドイんやぞと、自慢するよおなモンでもナシ。宣伝して回るわけにもイカンがな。
本人が告白せんかぎり、他人さんには分かりません。入院してまで治さんとアカンと云うモノでもナイ。イヤ、あるのですが、コレという対処方法もナイみたいです。対処方法が世の中には存在すかも分かりませが、巡り合うまでの時間が掛かる。
耳鳴りにも原因があって、結果がある。その原因が分からんでも、幸運にも合致した場合には苦労ナク治るのやろ。
それと、何時出合うのかが問題で、素通りしてもアカンのです。
そんななかで、長男が大学の合格発表も終わり、暫くはご機嫌さんやったのが元気がナク、様子がおかしいのです。家でジッとしてます。
ジッとしてるのではナイのです。テレビ・ゲームばかりしてるのですが、元気がナイ。
「どないした。」
「腰がなあ、痛いんや。」
「どんな具合や。」
「座ってるのもしんどい。」
「ナニか、心あたりはあるのかいな。重いモンを持ったとか。」
「ナイ。もしかしたら、ジッとしてたのがアカンかったんかなあ。」
「ゲームのし過ぎやなあ。」
「そおかもしれん。」
任しなさい。そんなことこそ、整骨屋はんです。
病院に行ったところで、湿布薬程度です。それなら、市販のを使ってるけど、今一らしい。
長男の腰のことは、嫁はんも知ってたのです。
「隣のヨウコちゃんがなあ、やってもらわはった接骨屋さんを教えてもろたけど、どおする。」
接骨屋はんなら、あっちこっちにあって、亀岡にもあるけど、行ったことがない。
何故か接骨は紹介を通じてとなってますが、その気なら、電話番号でも分かるし、予約も出来ます。
相良接骨院でもヨイのですが、値段と場所の問題がある。
「梅津で、四千円やて。」
「一緒に行こか。」
はっきり云うて、相良さんよりも安いです。半額やから、二人でも同額になる。先生のやり方が違えば、効果がアルかもしれません。
ということで、息子に予約を入れさした。
そこの診察券も貸してくれたけど、駐車場がナイとしてありますが、ヨウコちゃんはアルと云うから、車で行きました。
梅津には四条通りから入れるのですが、一歩中に入れば、道は狭いわ、曲がりくねってるわで、車は大変です。昔の事やけど、知らんと突入して苦労した。
その診察券の簡単な地図の通り、四条通りから、生協の信号を曲がり、狭い道に突入。
対向車を避け避け、川があり、橋がありの地図の場所に辿り着き。
「過ぎたんと違うか。」
「ナンデヤ。」
「橋を過ぎてしもた。その手前なんやで。」
地図は息子が持ってます。
「早よ言えよ。」
ちょっと戻れば、ベンツがある。
「ベンツと、ナンの関係があるのや。」
「接骨屋さんは、お金持ちと違うんか。」
私にはそういう印象は無かったけど、流行りさえしたら、元手はイランのです。お医者さん程度の収入かもしれません。
「やっぱりアソコや。」
そこには、四台停まれる駐車場がありましたが、満車です。
こんな道の狭い場所で、空くまで待ってられへん。
行ったり来たりのウロウロして、よおやく、停められた。
(98/11/27)


19.梅津の接骨院(2)

そこは、柔道整復師、石原接骨院分室としてあります。
待合室には患者も多い。七、八名です。
高校生も居て、平均値とすれば、相良接骨院より総じて若いです。
その分、待合室は何となく明るいのですが、人数が多い分、待たされる時間が長い。
最初に息子です。
「どおしたんや。」
「腰が痛いんです。」
「ナニかしたんか。」
「ナニもしてません。」
「ナニが原因やろなあ。」
「多分、ゲームのし過ぎとか。」
「そうか、動かんかったんや。」
息子は正直に報告してます。
「体を動かさんと、アカンで。」
先生は三十五歳そこそこ。息子は腰やけど、むしろ、背筋を伸ばすという感じで、その背後に回っての処置です。
ほぼ、十分程度で、短いなあ。私の番になって、
「どおしました。」
「耳鳴りです。」
アトはお決まりのことで、説明省略。
やっぱり、背後に回り、手を挙げ、背泳するみたいにグルグル回して、
「こおいう具合にやると、イインデスよ。」
「ナニにイインデスか。」
「こおいう動作、常にはしないでしょ。しない動作をすると、血行が良くなるんです。
つまり、耳鳴りは血行障害ですよ。」
そおいうことなら、プールで背泳をしたらヨイのやなあ。背泳は天井を見てるから、他の人にぶつかることがある。
ここまでは、どおと云うことはナシで、次でした。
「力を抜いて下さいね。」
力を抜いたら、背中は先生の膝で押さえら、顎と頭を腕と手の平に包まれて、ナニするのか、ビックリ仰天。
瞬間、真後ろが見えた感じです。首を九十度以上回された。モチロン、私の首がです。
思わず、逃げ腰。というより、がっちり抱え込まれてるから、投げだしてた足が宙に浮いた。
「先生、ビックリするやないですか。」
「これも、普段はしない動作ですからねえ。」
西洋映画でやらはるヤツです。首をギュッと捻って、殺してしまう、アレです。
そら、ビックリしますよ。殺されることはナイけど、力が入り過ぎとか、滑ったとか、そういう手違いがあったら、あの世行き。
「ハイ、結構です。次回の予約をして下さい。」
「ありがとうございました。」
受付で次週の予約です。
(98/12/02)


20.梅津の接骨院(3)

待合室で長男と順番待ちしてたら、新婚間もない若夫婦。
その婿はんが、腰痛なんやろ。嫁はんに抱えられてのご入場。
それにしても、嫁はんにしっかり抱えられんと歩けませんのです。腰痛はこんなことになるのです。座席に座るのさえ、やっとこさ。
その婿はんの髪型は茶髪でリーゼント・カット。嫁はんも茶髪でパーマネント。しかも、お揃いの皮ジャンで、喋り方から、顔の造りまで、アンチャン、ネエチャン。
待合室の入り口付近に座ってた男子高校生が、ソっと席を譲り、こっちに来たわいな。
こおいう女の子、嫁はんのことですが、テキパキしてます。婿はんを席に座らせたら、
「車を動かして来るからな。」
そお云うて、待合室に戻って来たら、受付で、
「ウチのが、腰、痛いんや。看たってんか。どれくらい、待つのんえ。」
「アンタ、三十分、我慢してんか。」
婿はんは、「ウン、ウン」と、頷いてるだけ。よっぽど、ツライんやなあ。
それにしても、こんな髪型で来られたら、先生もビックリやろ。
長男の方は前回の治療で、大夫マシになったみたいです。私の方は変化ナシ。
今回は私が先で、長男がアトです。
治療場所に次の人が入ることになってます。私の先客は女子高生。先生との会話からは常連客らしい。
お母さんと一緒に来てて、背はそんなに高くもなけど、バレーボールをやってるのです。
スポーツ推薦で、来年何処かの大学にでも行けたらなあ。待合室で云うてました。
とおとお、私の番です。あの首をギュっと回されるのが、どおもなあ。今回が二回目やから、対応できるかです。
治療内容は前回同様で、イヨイヨ、首の番。
またもや、思わず、足が宙に浮いた。見れば、長男が下を向き、クックと笑てやがる。コンチクショウめ。
終わってから、長男、
「お父さん、首、曲げてもろたとき、ギャー云うて、悲鳴上げたで。先生も、笑たはったで。」
声まで出してるとは思わんかった。
「オマエも笑たんやろ。」
この石原接骨院は、四回通いました。
長男の腰は治り、先生がこれで終了の機会に止めました。息子の腰痛治療につき合おただけです。
整骨は、腰痛には有効ですが、やっぱり、耳鳴りにはアキマセンです。
石原先生も、気長にやって下さいやて。
正直云うたら、こんな患者は困るやろ。治る見込みが乏しいからなあ。
来るから、やるだけという感もありました。
(98/12/06)


耳鳴りの話NO.2